「うつくしい子ども」

うつくしい子ども (文春文庫)
あの酒鬼薔薇事件を題材に、加害者(弟)の兄の視点を中心に描かれたミステリー。

緑豊かなニュータウンを恐怖のそこに陥れた小学生の女の子の殺人事件。犯人は弟だった。そのことで家族はバラバラになり、家を失い、学校でも嫌がらせを受けながら、兄は動き出す。その動機はその行為が最悪の行いでも誰かがわかってるやる必要があるのではないかと思ったから。そこに隠された大きな真実、新聞記者の視点を織り交ぜながら事件の流れに沿ったサスペンス。

先に犯人がわかっている小説というのは結構珍しいのかなぁ?ただその裏に隠されたものを探すという動機があった訳ではないのに、その中で真実の光が見え始めてきたのですが・・・・・。

ただもっと面白いのは、もしかしたら加害者家族の視点でものが描かれていると言う形。もちろん彼らに罪がある訳ではないけど、同罪のように咎められるし、嫌がらせも受ける。もちろん加害者に同情する事は出来ないかも知れないけれど、こういう視点があってもイイと思った。彼ら自身は加害者家族でもあるけど、マスコミや世間における被害者でもあるのだから。ひっくり返して全てを探るようなワイドショーのまねごとではなく心理に寄り添ってわかって上げる人がいるのはイイかも知れない。もちろんやったヤツが狂ってるってこともあるけれど、凄い面白い視点だと思った。真正面から捉えた幹生の姿勢には誰もが学ばなければならないし、誰も狂う可能性があるというのをもう一度思い直す様な話でした。そしてまた心暖まる作品ですw

石田衣良「うつくしい子ども」 文春文庫 ¥448