「赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝」

赤(ルージュ)・黒(ノワール)―池袋ウエストゲートパーク外伝
石田衣良のヒットシリーズ「池袋ウエストゲートパーク」の外伝。外伝と言うだけにマコトは登場しないし、マコトの目線とマコトの口調での物語が進んでいく訳ではない。今回は映像ディレクターでギャンブル好きの小峰渉が自らの愚かさから借金を抱え、池袋のカジノの上がりをかっさらう狂言強盗をしたが、そこからトラブルに引き込まれていく小説。画像はハードカバー。

今回は小峰が主役だけど、目立つのはこのシリーズで所々活躍してきたヤクザの“サル”こと斉藤富士男。彼がマコトの時と同じように事件のオーガナイザーというか見張り役として共に行動し、活躍する。良くこのシリーズに「グレーゾーン」という言葉が出てきていたが、今回は完全に「真っ黒の世界」が舞台になる。そう、今までは白とも黒ともつかないストリートが舞台だったけど、サルの存在がクローズアップされているように社会の裏側であるヤクザの世界が主なフィールドになる事で結構世界観も変わり、また内容も結構ハードボイルドな内容になっていると思う。

しかし、その中にこの小説の良さでもあるテンポの良い物語とスタイリッシュな時代背景も勧善懲悪ではない独自の価値観の中で進んでいく所は、やはりこのシリーズなんだなぁと感じる。アウトローなギャンブルやどちらかと言えば思惑や私欲という泥どろっとしたものがかなり交錯していくのが外伝なんだろうという感じ。でもいつもより長い仕上がりも全く気にならず、最後にはスカッとするような読了感(ちょっと格好いい言葉使っちゃったw)があって、やっぱり石田衣良って感じです。結構このシリーズを敬遠している人でギャンブル好きの人にはお勧め(なんだそれ)タイトルの赤・黒(ルージュ・ノワール)はラストシーンをから来ているものです。

石田衣良「赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝」 徳間文庫 ¥571