パレード

パレード (幻冬舎文庫)マンションの一室を4(5)人の若者がシェアしながら生活していく中で、色々と起こる出来事の中でそれぞれの考え、思惑を描いたミステリ小説。

小さなコミュニティの中でも色々と彼らが相手に気遣い本当の自分とは別の自分を繕いながら、生活しているのを描写したものなのですが、一人一人本当の心の本音というものが一人一人の章で徐々に見えてくるところが非常にリアリティを感じました。そこにいるのが当たり前の異物感を感じさせないための心遣いも人それぞれ違うし、この生活をどう感じているかも違う。当たり前の事を書かれていますが、それが表現されている事に恐怖を感じました。人間ではなく、人間関係を赤裸々(この言葉遣いは違うかなぁ?)に表現されている事が怖い。そしてその関係が狂わせる真実・・・・・(あぁ、またネタバレか?)

集団の中で生きるための距離感、本音、歪み、そんなものが吉田修一らしいおしゃれな文章で軽く進められているところがこの本を読ませてくれる。と言うより平凡な話の連続となりがちな感じもしなくもないけど、飽きずに読めるし、読むごとに話の印象が変わる不思議な小説。わかっている事を前提に読んでいるとまた一人一人のその本音と歪みがまたわかって、感想さえ変わりました。面白くて、不思議で、怖い小説。すっごいおすすめですw幻冬者文庫初体験だったけど、一枚一枚のページが厚いんだなぁ。

吉田修一「パレード」 幻冬者文庫 ¥533