「亡国のイージス」

亡国のイージス 上 (講談社文庫)亡国のイージス 下(講談社文庫)在日米軍基地で起きた未曾有の惨事。その元凶とも言える「あれ」の国家間の策謀に様々な人の思惑を抱えてミニ・イージスシステム護衛艦いそかぜ」は思いもよらぬ暴走に導かれてしまう。長編海洋冒険小説。ホントに長編。

登場人物それぞれの正義のため、アイデンティティのために、そして自らの感情や思いが沢山絡み合い、それは信頼や裏切りと言う形で表れ、そしてそれが決算として最後にもう雪崩のようにクライマックスに向けて流れていく。めちゃくちゃ長いのですが、ずーっと緊迫感があるまま読み切ることが出来ました(当たり前だけど普通に2週間ぐらい掛かりましたが)

最初は正直軍国モノかぁとか思って、やっぱり専門用語が沢山でなかなかイメージがわかなかったのですが、艦内生活の描写で艦内の雰囲気やイメージが掴めるようになりました。というのは作者の非常に入り組んだ難解な世界観に浸るための丁寧なツアーみたいなモノなのかもなぁと。導入部として考えても仕掛け満載なのですが、そこがうまく処理されていたのでこの作品自体に入り込める人が多くて評価の高い理由なのかも知れません。

それにしても出てくる人たちが本当に熱い!濃い!そして何より切ない!圧倒的迫力の中で起こる人間ドラマが何よりの見所。もちろん二転三転する急転直下の筋もものすごい読ませてくれる訳ですが、そこに存在する人間というのを軽くしなかったことに尊敬の念さえ思います。軍人という特異な人間の性質のをどの人にも感じるのですが、その正確が又紋切り型ではないので、それぞれに特徴を感じたりと非常に面白かった。良くこれだけ多い登場人物を裁けたなぁと思うのですが、これに比べてどっかのアニメはさぁ・・・。

福井春敏氏の現代日本の矛盾や体質などの批判や問題定義的な部分は強く感じる部分も否めないけど、それも又大切なこと。日本という国をうまく捉えていると思うし、それでまたリアリズムを読んだのかなぁと。まあとにかく読まなきゃ損です。壮大なスケールを味わえ!

福井春敏「亡国のイージス講談社文庫 上下巻とも¥695