「四日間の奇蹟」

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)「第一回このミステリーがすごい!」大賞、大賞金賞、受賞作品。留学先のウイーンで指を失い、自らの生き甲斐であったピアノを失ってしまった敬輔は、その事件で肉親を失った脳に障害を持つ少女・千織と一緒に暮らすようになった。千織は音楽の才能を有していて、ピアノを習得して様々なところに弾きに行くように、その中で訪ねた山奥の診療所。そこで起きた事故を引き金にが不思議な奇蹟が起きる。ファンタジー小説

ミステリーと書いてありますが、ミステリーと言うよりラブストーリーと言うような感じですが、確かに巻末の解説と同じように前に書いた東野圭吾の「秘密」と同じ仕掛けであるのは間違いないです。ただその人々が抱える闇、闇の中でも持ち合わせる思いやりと優しさ、そして起こる奇蹟はストーリー自体が非常に素敵でした。嫌みに感じない部分も含めてありきたりでも読ませてくれると言う意味では本当に素敵な小説だと思います。

この小説がこの浅倉氏にとっては処女作のようですが、本当にうまいし、綺麗。多少説明がくどい部分もありますが、専門用語などの使い方もまとめられていて読みにくくはないし、本当に処女作とは思えないです。ただもちろん物足りなかった部分もあります。ミステリーと銘打ってるだけに謎解きというか何か隠されているのかなぁと楽しみにしていたのですが仕掛けの部分では薄いのが現実です。それでも登場人物が非常に浮き立っているし、基本的に謎解きよりも心の動きを表していて、葛藤や描写などに登場人物の様々な思いに重きを置いているというのがあるからだと思うし、そうしたからこそこの作品が優しい小説に仕上がったのかなぁと。

個人的には大甘すぎて感動とかにはなりませんでしたが、時代的に「世界の中心出会いを叫ぶ」「今、会いに行きます」など純真無垢な感動を求めている時代には合っているのかも知れません。この度映画化もするようで、第3の感動の波に乗れる作品かなぁと。本当に綺麗な作品だし、同じ潮流にある作品なので、上の大ヒット作が大好きだという人にはお勧め出来ると思います。ただ難しそうですね、演技。

個人的には「秘密」の方が好きです(てゆうか自分はこういう恋愛系ではこれが一番と思っているので)と言うより大甘なのは苦手というか、心がひん曲がってるせいか、素直に受け取れなかったりするので(苦笑)好きな人には本当に好きになれると思います。

浅倉卓弥四日間の奇蹟宝島社文庫 ¥690