「冷たい誘惑」

冷たい誘惑 (文春文庫)1つの拳銃をふとしたきっかけで持つ事になった。そんなとき人はどんな思いをし、どんな行動を取るのだろう。「コルト」の魔力に魅せられた人々を描いた連作短編集。

最初に購入する時は結構ハードボイルドっぽいものなのかなぁと思ったのですが、1つの拳銃を巡りながら、人間臭いドラマが小気味よく進む小説で少しびっくりしました。「コルト」がどのようにその人に手に渡り、その人が銃に接し、どのように銃を使い、そしてどうやって手放すのかという流れなのですが、その中に登場人物の生活がもの凄い入り込んだりして、飽きません。もっとちゃんと書きたいのですが、ネタバレするので難しい(苦笑)

日常の中に急に非日常的なもの入り込むと言う形がやはり凄いリアリティを感じたりしました。そのリアリティはやっぱり日常があるからであり、日常は誰にでもあるからすっごいは入りやすかったのかも知れません。個人的に一応悪い事をしてるから、結構その後に「報い」というものがありそうだけど、「報い」ではなくそれが最後は救いとなって日常に戻っていく。そんな優しさがこの本が素敵だなぁと思った理由だったりします。

「銃」を持ったらきっと興味は持つ、きっと撃ってみたくなる、そして慣れた時には何か頼るようになる。きっとこの「銃」という部分が何か違うものに変わってもきっとそうなのかも知れません。「恋人」だったり「お金」だったり、はたまた「アルコール」かも。人間は強くないからこそ頼るし、色々とそういう感情を持つけど、そんな形が救われるような優しさがあってもイイと思ったりしました。乃南アサっぽくて乃南アサっぽくない感じですが(笑)個人的にカバーも気に入ってるかも、表現的に。

乃南アサ「冷たい誘惑」 文春文庫 ¥457