「パイロットフィッシュ」

パイロットフィッシュ (角川文庫)優しい小説。エロ本の編集長山崎の元に19年ぶりの掛かってきたかつての彼女からの電話。そんな折り、1年に1回同じ場所で同じ時間に会う約束の中で、印象的な回想録と現在が進む中で感情の永続性を見せてくれる青春小説

水槽の中をきれいに保つために住ませて、その後は捨てられてしまう熱帯魚「パイロットフィッシュ」になぞらえる水槽の中の生態系の話はこの小説を表すものだなぁと思ったりしました。水槽の中は生態系のバランスが取れいていて、バクテリアのバランスが良いから水槽はクリアなままなのだそうだ。それは人間の精神世界もこれに似た印象を受けました。記憶に悩まされ、記憶の癒され、現在に楽しみ、悲しみが詰まっていたりしていくけど、どれかが大きくなれば濁るし、バランスが取れている時はクリアだったりという印象を受けたりしました。

正直ちょっとノスタルジックすぎたり、センチメンタルすぎるヒロイン、少しあやふやな部分があったりと釈然としなかったりもするけど、透明感溢れる優しい文には癒される人もきっと多いはず。村上春樹の世界にも似た感じで、読後感も似てるかなぁという感じもしますが、もうちょっとだけ詰めて欲しかったなぁ?優しい世界はそのままに。でも話自体はきれいで良いから。

自分がもし40になって19年間会わなかった元カノにあったらどうなるだろう?とか思うと不思議にあんまり創造出来なかった。友達みたいになっているだろうか?それともすっごいどぎまぎするだろうか?過去を笑えるようになってるのかなぁ?色々と考えたりしました。うーん。

優しくて不思議な世界は癒される一冊だと思います。

大崎善生パイロットフィッシュ」 角川文庫 ¥476