「将棋の子」

将棋の子 (講談社文庫)将棋の天才が集まる奨励界。奨励界の少年達は若き日の情熱の全てを将棋に捧げている。そして厳しい期間制限の中で、人生が掛かる一局のドラマ、そしてその夢が敗れた後を追ったノンフィクション小説。

これを書いている大崎善生は、小説家として今はもう有名になっていますが、以前働いていたのは将棋連盟の中の「将棋世界」という雑誌の編集長だったそうです。だからこそ、その奨励界の中の事情も泣き笑いも星の数程見てきた中で、やはり彼らに対する眼差しは本当に優しい物でそれがこの小説の中に凄い溢れているなぁと。確かに明るい話ではなく、挫折の後社会生活に戻るとやはりそれは厳しい現実があったり、
決して明るい未来などを描いている訳ではないけど、この優しさが何か心にしみいりました。

個人的にやっぱり最初のページと最後のページは凄いきれいで、大崎善生らしい情緒的な文章が非常に印象的です。とても感動出来るノンフィクションであり、凄い素敵な小説です。

大崎善生「将棋の子」 講談社文庫 ¥590