「海を抱く BAD KIDS」

海を抱く BAD KIDS (集英社文庫)前作「BAD KIDS」の中で端役だったサーファーの光秀と生徒副会長の恵理が織りなすサイドストーリー。不器用な二人が心の中に抱えるものを奥底に隠しながら、一つの出来事から不思議な関係に陥っていく課程の中で、心の中の深い悩みと対峙していく青臭くも瑞々しい青春小説。

個人的に高校生や中学生が主人公の作品が好みな僕は、青臭いものも結構好きなんですが、二人の人間的な弱さやそれでも強がったり、隠したり、そして本能の部分で優しくしたかったりと、そういう気持ちが何か凄いストレートに描かれていて、結構素直に物語に入っていけました。

二人の存在が非常に良くできたキャラクターであり、またそれがまた非常に痛々しくて、それがまた共感を呼べる様なひりひり感があるのが素敵です。立ち向かう強さ、内向する弱さ、人間的な部分が非常に浮き出てくる部分が素敵です。

人間は誰もが「欲望」の引き寄せる強さに魅せられてしまうものですが、「良心」だったり「自制心」だったり人間としての「理性」が「欲望」との綱引きで心を非常に苦しめたりするわけで、若い世代では相当その素直さな故、苦しんだりするのかなぁと。そんな欲望への強さと理性が見事に描かれているのが素敵です。個人的には光秀の気持ちが凄いわかったり、その中でまた自分の一番大事なものでさえ、バランスや大事なものが崩されてしまうと言うのが凄いわかりました。重なったりして結構苦笑いしそうになりました。

さて、村山由佳は「星々の舟」で直木賞を取りましたが、このシリーズが個人的に大好きです。と言うよりこの「海を抱く BAD KIDS」が彼女の作品の中では一番好きかも。都と隆之の心の葛藤や屈折した心を純粋な形で描いた「BAD KIDS」より魅力的でまた深く掘り下げられていて好きです。おすすめ。

村山由佳 「海を抱く BAD KIDS」集英社文庫 ¥600